2013年7月7日日曜日

ストレングスコーチの役割とトレーニングスタイル

今回はストレングスコーチの役割とトレーニングスタイル(フィロソフィー)について綴ります。


自分の大学(Southeast Missouri State University)と現在のインターン先(Harvard University)両校のS&Cプログラムで全く同じストレングスコーチの役割とトレーニングスタイルを基本として学んでいます。
まぁ両校のヘッドS&CコーチがUniversity of Iowaでインターン経験がありなので、一緒なのですが。




ストレングスコーチの役割

1.怪我の減少
  -怪我予防でなく、減少。全ての怪我を完全に予防できることは絶対に無理であるが、怪我の発生率減少と怪我の重症度を軽減することは、正しいトレーニングによって望めます。

2.運動能力・体力の向上
  -選手の筋力、パワー、スピード、アジリティ、柔軟性、持久力、etc.を向上させる。


ポイントなのは怪我の減少が運動能力向上より先であること。どんなに素晴らしい運動能力を持った選手でも、怪我が多くては試合で活躍できません。
80年代NBAのラルフ・サンプソンや最近引退されたグラント・ヒルのオーランド・マジック時代のように。




トレーニングスタイル(フィロソフィー)

1.Ground Based Movement=地面に接したムーブメント
  -ほとんどのスポーツは自身の足が地面に接着している状態でプレーをするので、トレーニングでも地面に足が接した状態でトレーニングを行う。

2.Multi-Joint Movement=多関節運動
  -スポーツのプレー中に単関節運動はないに等しいし、プレー中のほとんどの動作が多関節である(例:ピッチングやゴルフスイングなど)。だから、トレーニングは多関節で行うこと。

3.3 Dimensional Movement=立体的ムーブメント
  -スポーツ中の動作は前後、左右、上下といろいろなムーブメントが要求されるので、それを考慮してトレーニングを行うこと。


つまりはフリーウエイトが一番好ましいトレーニングスタイルです。
マシントレーニングは、地面に接していないし、関節可動域に範囲制限ができるしと負の面が存在します。 もちろん、場合によっては使うときもあります。例えば、リハビリなど。



よりも



こっち



これをメインで行うより



腕立て
体幹の安定性も鍛えられるしね。







しかし暑い。このサミュエルアダムスのサマーエールがとても美味しい。


2013年7月6日土曜日

Low Intensity Day Workout Part II (低強度日の運動 その2)

前回は低強度日の運動の第一弾として、Cardiac Output Methodについて綴りました。


今回も低強度日の運動を一つ紹介します。


<Tempo Interval>

英文ですが、記事があったのでリンクしておきます。
http://www.8weeksout.com/2011/06/17/tempo-intervals-mma-fitness/

運動目的:疲労を抑えつつ or Active Rest(積極的休息)で疲労回復が目的である一方、持久力向上・Aerobic Energy System(有酸素系エネルギーシステム)の向上も担う。
運動時間:10-12秒運動し、その後に60秒休息。 この休息は、Active(積極的休息)でもComplete(完全休息)でもどちらでもOKだが、記事ではActive Restの方をお勧めしています。
運動強度:1-10のスケールがあったとして、6程度の強度
運動種類:走ってもいいし、縄跳びでもいいし、技術練習でもOK
運動例:45 yards Tempo Run (4x4), 60 yards Tempo Shuttle (4x4), Bag and pad work, shadowboxing, etc.


上に述べた運動例を詳しく解説したいと思います。

<45 yards Tempo Run>
45 yards (約40m)を走ります。走る速度は個人のトップスピードの70-75%のスピード。大体9・10秒以内で45 yardsを走り抜けるという感じです。 これを4 sets X 4 reps行います。 
Rep間の休息は60秒程でActive Rest を行うなら、走ってきた45 yardsを歩いて or 軽めのジョグで戻ることで良いと思います。
Set間にTorso Workを入れても良いです。例として、プランク、サイドプランク、グルートブリッジなど。
慣れてきたら、レップ数やセット数を増やしてもOKです。 レップ数は16-24回が目安ですので、4x4, 4x5, 4x6, 5x4, 6x4, などが良いでしょう。また、45yardsから距離を伸ばしてもOKです。スポーツによっては、短い距離だったり長い距離を設定することもありますが、ほとんどは45-65 yards 程度です。

<60 yards Tempo Shuttle> 
http://www.youtube.com/watch?v=pDf-gGi58mM

この動画だと見やすいです。

15yards(約13・14m)を2往復します。だいたいスプリントならば14秒程度です。ちょっと基準を超えてしまいますが。 レップ数・セット数もTempo Runと同じです。自分は60 yardsから距離を伸ばしたりはしません。 スプリントだけでなく、シャッフル(バスケのディフェンスステップ)やバックペダルを用いるのもアイデアです。

<技術練習>
これはS&Cコーチの範囲外のお仕事ですので、自分が今まで、そしてこれからも携わることはないです。

例としては
シャドーボクシングを12秒行い、60秒休息。これを何セットか繰り返すという感じですね。このシャドーボクシングも70-75%程度の力で行う事です。

バスケだったら、ハーフコートを用いて、ドリブルのドリル etc.

まぁここは、そのスポーツ専門のコーチの出番です。




今日はお昼くらいからインターン仲間と遊びにいきます。何するかはわかりませんが、とりあえずHay Marketあたりに集合とのこと。 イタリア街のNorth Endに行って、ジェラートでも食べるかな。笑


Low Intensity Day Workout Part I (低強度日の運動 その一)

こないだはHigh Low Modelについて綴りました。
今回はそこから、Low Intensity Day(低強度運動の日)の運動について綴ります。

低強度=ジョギング?

ジョギングについても前回の記事で書いたので、ご参照ください。




自分が個人のワークアウトでよく使っている物

1.Cardiac Output Method
2.Tempo Interval

自分の大学(Southeast Missouri State University)で使われている物

Tempo Interval


今日はCardiac Output Methodの紹介をします。


Cardiac Output Method

運動目的:①長時間の低強度運動で心臓をストレッチ(伸長)することによって心臓自身のエキセントリックな力が作られる=心臓を拡張できる
               ②Type I Muscle Fiber(遅筋)の筋持久力向上
運動時間:30-90分で合間に休憩なし(もちろん水分補給はあり)
運動強度:低強度;運動中の心拍数を120-150bpmを保つことが目安
運動種類:何でもOK 軽めのアシスタンスワークや技術練習(S&Cコーチの領域ではないですが)でOK。ただしプライオ、スプリント、軽い負荷でのオリンピックリフトは範囲外です。
運動例:Jump Rope, Med-Ball Work, Step-Up, Prowler March, Sled Pull, Torso Work (Farmer's walk, Waiter's carry, etc.)


自分が用いてる例を出すと

運動時間:40分のCardiac Output Method
運動種類:Jump Rope, Prowler March and Torso Work (Farmer's walk and Waiter's carry), Step-Up, Med-Ball Work

これを元に4つのステーションを作ります

A:Jump Rope (5分)
B: Prowler March and Torso Work (5分)
C:Step-Up (5分)
D:Med-Ball Work (5分)


Jump Rope、つまりは縄跳び。5分間跳んでます。気分で跳び方を変えます。片足で跳んだり(高回数はしない)、ボクサーステップしたりなど


Prowler March、重さは20kgのプレートを2つくらいつけて押しながらマーチを行います。姿勢は真っ直ぐ、膝を上げて。
動画はこちら  ※この動画にLike(イイネ)やコメントはご了承ください


Torso Work
1. Farmer's Walk
片手でダンベルを持ち、歩く。 重さの基準は自体重の40%以上。上体は真っ直ぐ=肩甲骨を寄せる=胸を張る

2. Waiter's Carry


ピザ屋の店員がお客にピザを持ってくる時の体勢。これで上体のAnti-Extension(反伸展)の能力向上が望めます。重さはFarmer's Walkよりも軽め。

なんかピザ屋のイメージがあるんだよなー

Bでは
①Prowler Marchを20ヤード(約18m)を1往復

②Farmer's Walkを片手20ヤードずつ(行きで右手、帰りで左手)

③Prowler Marchを20ヤード(約18m)を1往復

④Waiter's Carry 距離はFarmer's Walkと同じ

⑤ ①に戻る
これを5分間繰り返します。



Step-Up プライオボックスやらベンチやらを用意して、5分間を自体重のみの負荷で登り降りします。
太ももが地面と水平になるくらいの高さの台が基準です。
この写真で言うと、右脚は使わず、左脚のハムストリングスと大臀筋に意識を集中させます。もちろん、姿勢は真っ直ぐ。
これを両脚交互に5分



Med-Ball Work


これを使って腹筋!!!!!


なんてことは行いません。

壁を用いて、ボールを投げます。





ボールを投げるだけが目的ではありません。

ボールを受け取るときに使う外的な力を受け止める身体能力向上も担っています。



このように、ABCDを各5分づつ、一回りを1セットとし、それを2セット=40分




以上、Cardiac Output Methodでした。

ピザの話題出したらセントルイススタイルピザ食べたくなったー

2013年7月2日火曜日

High Low Model(記事)

今日はコンディショニングについてのある記事についてのまとめと自分なりの考えを綴ります。



最近、あるブログで、”キツイトレーニングは必要か?”という事について触れてある記事を読ませて頂きました。

自分が思うとこ、キツイトレーニングが必要でなく、目的がはっきりとしている上で正しいトレーニングをするのがスマートな方法だと思います。 その結果で、アスリート自身がキツイと思うかどうかはプログラミングする上でのポイントではないと思います。コーチ自身が、”キツイトレーニングをしてきたから選手にキツイトレーニングをさせる” というのは問題です。



今日はこの記事を紹介します。

http://www.8weeksout.com/2011/09/13/high-low-training-mma-fight-magazine/
<High Low Training & MMA>

この記事の著者はJoel Jamiesonという主にMMAファイターのストレングス&コンディショニングコーチです。

High Low Modelとは、一つのトレーニングプログラミングの考え方です。

単純に、高強度運動の日(High Intensity day)と低強度運動の日(Low Intensity Day)を交互に組み合わせて、体力を向上させましょうっていうことです。


サンプルスケジュール(1週間)


ちなみに自分の大学(Southeast Missouri State University Athletics S&C Program)では

月曜:High
火曜:Low
水曜:High
木曜:Low
金曜:High
土曜:OFF
日曜:OFF

というスケジュールで行っています(今年の夏は分かりませんが...)

また高強度/低強度トレーニングのサンプルも


<低強度トレーニング>
・1から10までのスケールがあるとします。10が今まで行った運動で一番キツイと思うものをあてはめます。1にはカウチでテレビを見ながらくつろいでる状態を指すとします。低強度トレーニングの目安はその間の6くらい程度の強度での運動を指します。

・高重量ウエイト(90% of 1RM Squatなど)や爆発的な運動(プライオやオリンピックリフティングなど)は低強度日に含めない。

サンプルエクササイズ
・テンポインターバル
・8-12レップ範囲でのアシスタンスワークとなります(ダンベルロウなど)  
※テンポインターバルについては次回、触れたいと思います。

<高強度トレーニング>
・トレーニングは可能な限りハードワークを。上記の1-10のスケールでいうところの、9か10でしょうか。
・高重量を扱うウエイトや爆発的運動は高強度日に。
etc.

サンプルエクササイズ
・オリンピックリフト
・インターバルトレーニング
・高重量ウエイトトレーニング
etc.



1.なぜ高強度/低強度を交互に入れるのか?
 
    もし、平日5日(月-金)を全て高強度トレーニングとします。最初の2・3日(月-火・水)はそれなりに高重量をこなせるかと思います。 しかし最後の2日(木・金)となると、疲労がたまって、思うように高重量が持てない、高く跳べないなどが起こりうるはずです。

高強度日は個人の筋力・筋パワー向上の日です。身体がフレッシュな状態で高重量ウエイトやオリンピックリフトを行うのが、筋力・筋パワーを向上させるのに最適です。疲労が溜まった状態で行っても、身体がフレッシュな状態に比べて高重量は扱えません(危険です)。それでは筋力・筋パワー向上は望めません。

高強度と低強度を交互に入れることで、低強度日に身体の疲労を取り除くことができる。よって翌日の高強度日に良いコンディションでトレーニングを行える。


2.低強度日よりも完全休養の方が良いのでは?

  軽めの有酸素運動を行うことで、身体に溜まった乳酸をグルコースに変換できます。これを糖新生(Gluconeogenesis)と言います。ただ、乳酸は疲労の原因ではないとも聞きます。ここは、自分の勉強課題です。


3.低強度日をそんなに入れたら体力向上にならないんじゃないの?

低強度日は疲労回復が目的ですが、持久力向上の目的も担っています。
有酸素運動を用いて、Aerobic Energy System(有酸素系エネルギーシステム)を向上させ、それが結果として、体内の血流量増加、VO2MAX向上などに繋がり、体力向上が望めます。





<注意点>
有酸素運動だからといって、1時間ジョギングとかではありません。逆に長時間のジョギングは筋力・筋パワー減少、柔軟性減少といった負の面が存在します。


<感想>
このHigh Low Modelはシンプルながら、効率の良いトレーニングプランが組めます。私自身もこのモデルをある一定期間(3-4か月程度)利用しましたが、トレーニング自体に鬱になることなく、週の終わりになっても、そこまで酷い疲れがない状態で高重量ウエイトやオリンピックリフトを行えてました。
このモデルを学生・プロアスリートに使用するとなると、ちょっとした変化が必要かと思います。
オフシーズン中はシンプルに週5・6日のプランで交互に使えば良いと思います。
プレ・シーズンやイン・シーズンとなると、練習や試合が入ったりで、かなりモデルを変更せざるを得ないかと思います。

例として、そのチームがイン・シーズン中に週2日、ウエイトルームに来るとして、1日は高強度で、もう1日は低強度(20・30分有酸素/フォームロール/ストレッチ etc.)といったプログラムを組んでいくのが最善かと思います。





次回はテンポインターバルなどを含めた、低強度日用の運動プランを紹介したいと思います。